北海道

第4章 計画の主要施策

第4節 内外の交流を支えるネットワークとモビリティの向上

 この計画の戦略的目標を達成するため、前述の主要施策の展開と併せて、道内外の拠点を結び経済活動を支えるネットワークの強化とモビリティの向上を図るとともに、広域分散型社会に対応した地域交通・情報通信基盤の形成や、積雪寒冷な気候に対応した冬期交通の確保を図ることにより、活力ある地域経済社会の基盤を整備していくことが必要である。
 
(1) 国内外に開かれた広域交通ネットワークの構築
 
(高速交通ネットワークの強化)
 広域分散型社会を形成している北海道において、交通機関が相互に連携・連続した利便性の高い高速交通ネットワークの形成を図るため、高規格幹線道路を始めとする基幹的なネットワークの整備を推進するとともに、内外との交流基盤である新幹線、空港の整備を推進する。
 高規格幹線道路を始めとする基幹ネットワークについては、今後の具体的な道路整備の姿を示す中期的な計画に即して、主要都市間を連絡する規格の高い道路、拠点的な空港・港湾へのアクセス道路や国際競争力確保のための道路などに重点をおいて効率的な整備を推進する。
 北海道新幹線については、平成16年12月の政府・与党申合せ「整備新幹線の取扱いについて」に基づき、着工区間の着実な整備を進めるとともに、それ以外の整備計画区間である新函館・札幌間について所要の事業を進める。
 航空については、海外との玄関口となる新千歳空港において国際空港機能の向上を推進する。また、その他の道内各空港についても、東アジア地域等との交流が緊密化・高頻度化していることを踏まえ、必要な国際空港機能の向上を図る。さらに、国内外の航空路線網の充実を支援するとともに、国際競争力の強化や空港背後地域の地域競争力強化、空港利用者の利便増進を図るための空港機能の高質化を推進する。
 
(国際競争力を高めるための物流ネットワーク機能の強化)
 北海道は、北米と東アジアを結ぶ線上に位置し、ロシア極東地域にも隣接している。また、シベリアランドブリッジ(注18)を通じて欧州と結ぶことも可能である。このような地理的優位性を活かして、北海道における国際物流の一大拠点の形成を図るため、苫小牧港の国際海上コンテナや新千歳空港の国際航空貨物の輸送に係る機能強化を推進するとともに、港湾手続の統一化・簡素化等港湾サービスの一層の向上、国際複合一貫輸送等の新たな輸送手段の確立を促進する。
 また、北海道の基幹産業である農業、製紙業等の競争力を強化するため、飼肥料や原材料の輸送コスト低減に資する多目的国際ターミナルの整備を推進する。
 さらに、港湾・空港や道内各地の物流拠点・生産拠点と高規格幹線道路とのアクセスを強化するほか、国際標準コンテナ車が支障無く通行できる幹線道路ネットワークを構築する。
 一方、国内物流においても、本州と北海道を結ぶフェリー、RORO船(注19)航路による輸送効率の高い国内物流の促進を図るため、内貿複合一貫輸送機能の維持・向上を推進する。
 
(2) 地域交通・情報通信基盤の形成
 
(バランスの取れたまちなか交通体系の実現)
 将来の望ましい都市・地域像の実現に向け、徒歩、自転車、自動車、公共交通がバランスの取れた交通体系を構築することが必要である。
 このため、地域公共交通の活性化や再生、交通結節点や歩行者空間、自転車走行環境の整備を推進することにより、高齢者、通学者等の日常生活におけるモビリティを確保する。また、広域分散型社会である北海道では自動車が交通手段の主役となっていることを踏まえ、渋滞の解消に向けた踏切対策、都心部へのアクセスの改善等を推進する。さらに、これらのハード・ソフト両面からなる総合的な交通施策を関係者が一体となり、戦略的に推進する。
 
(地域の実情に即したモビリティの確保)
 北海道における地域公共交通は、高度に人口が集積した都市部を除き、バス交通が主役であるが、利用者の減少等による運行本数の減少や収益構造の悪化などにより、その維持が厳しい状況にある。
 地域の実情に即したモビリティを確保するため、市町村、公共交通事業者、地域住民等の地域の関係者が協働して主体的な取組を行うことが必要であり、コミュニティバス(注20)やデマンド型乗合タクシー(注21)の導入等、地域公共交通の活性化・再生を図るための取組を促進する。
 また、新たな公共交通として、観光資源としても期待されるDMV(デュアル・モード・ビークル)(注22)の実用化に向けた取組等を促進する。
 離島交通については、本土への安定的なアクセスを確保するため、航路・航空路の維持及び防波堤等の整備を推進する。
 人口減少下において、多様化する地域や交通利用者のニーズにきめ細やかに対応し、効率的・効果的にモビリティの向上を図っていくためには、行政だけでなく地域や交通利用者も含めた多様な主体の発意や活動を活かすことが重要である。このため、「シーニックバイウェイ北海道」の取組から得られた知見を基に、地域の発意、地域資源、既存ストックを最大限活用した地域課題の解決、交通基盤施設の整備やその利活用を推進する。
 
(情報通信体系の整備と利活用の促進)
 国内、世界との交流や、広い北海道内の交流等、広域的な交流の強化に向けて、情報通信の利活用は、活力ある地域社会の形成のため必要不可欠である。とりわけ、高品質な食料を供給する農山漁村や優れた自然を有する観光地など人口低密度地域において、競争力ある地域産業の振興や地域社会の活力維持を図るため、情報通信体系の充実を推進していく必要がある。
 このため、光ファイバ網や無線アクセスシステム(注23)等の情報通信体系の整備を推進するとともに、情報通信技術を利活用した公共サービスの高度化・効率化等を推進する。
 
(3) 冬期交通の信頼性向上
 冬期における道路交通は、積雪や路面凍結に起因する都市部の渋滞、地吹雪や雪崩等による通行止めの発生など多くの問題を抱えている。これらの問題を克服し、安全で信頼性の高い道路交通を確保するため、効率的な除排雪の実施、雪崩防止施設や防雪林等の整備、堆雪幅の確保、凍結路面対策等を推進する。
 また、航空輸送の定時性・安定性を確保するため、ILSの双方向化(注24)や滑走路の改良、除雪体制の強化等を推進する。
 
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(注18)シベリアランドブリッジ:日本からの海上コンテナ輸送とシベリア鉄道を組み合わせて、欧州、中近東向けに貨物を輸送する国際複合一貫輸送のこと。
(注19)RORO船:ロールオン・ロールオフ(Roll on/Roll off)船の略。貨物をトラックやフォークリフトで積み卸すために、船尾や船側にゲートを有する船舶。
(注20)コミュニティバス:公共交通が空白または不便な住宅地区などで、高齢者や体の不自由な方にも安全で利用しやすく、地域住民の多様なニーズにきめ細やかに対応する地域密着型バスシステムのこと。
(注21)デマンド型乗合タクシー:利用者の需要に応じて運行する乗車定員10人以下のタクシー車両による乗合自動車。
(注22)DMV(Dual Mode Vehicle):道路と線路の両方の走行が可能な車両。
(注23)無線アクセスシステム:無線ネットワークを用いてインターネット接続(データ伝送)を行う仕組みの総称。
(注24)ILSの双方向化:航空機の着陸において、低視程時や悪天候時においても安全に着陸できる機会が増加する計器着陸装置(ILS:Instrument Landing System)を滑走路の一方向からの進入だけでなく双方向からの着陸に対応できるようにするもの。

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